2023/05/09

第45回学生設計優秀作品展 作品紹介[1]

空虚から余白へ
- 建築の段階的解体によるアクティビティの挿入 -
 
千葉工業大学 創造工学部 建築学科 坂井恒太

[作品データ]
建物用途:空き家の活用
敷地所在地:東京都葛飾区青砥

[制作データ]
作品総点数:模型4点 図面12枚
制作期間:構想 - 3か月、制作 - 4週間
主な模型材料:スタイロフォーム、スチレンペーパー、角材、 ニス、ジェッソなど

[設計主旨]
役目を終えた建築はある日突然、町から姿を消す。しかし、時間が経つとまた新しく建築が建つ。敷地に残されるもの は何もなく記憶からも失われ、消えていく。私は、その光景に違和感を覚えた。 本提案は、建築家が解体屋の領域に介入し、段階的解体というプロセスそのものでアクティビティを生み出すものである。仏教の九相図を参考に建築を段階的に解体し、4つの段階で止め、アート的に表現をしていく。 最終的に、空き家から出た廃材を転用し、空き家の記憶となるものを敷地に残すことで、生まれたアクティビティを敷地に定着させ、公園的な消費を伴わない余白を生み出す。 建築のエンジニアである建築家が行うことである種の実験、検証的な意味合いを持ち社会的な意味があるだろう。

[推薦のことば]
千葉工業大学 創造工学部建築学科 教授 石原健也
ある日突然仮囲いに覆われ姿を消す空家。更地から過去の姿は思い出せない。記憶は脳内ではなくその建物にあることを思い知らされる。「解体を設計する」。解体プロセスと資材の転用に関わることができるかがテーマである。対象となる家屋を特定し、具体的構造を知らなければ空想物語りに終わってしまう。候補地探しは難航し、やっと探しただした物件は土手沿いの三軒。外観からその構造を想像する。一般木造家屋の構造・構法を調べ、リバースエンジニアリング的に図面化する。その作業自体が多くの学びとなったであろう。 1年かけてゆっくりと解体を進める想定とし、そのステージ毎の状態にプログラムを挿入して周囲にひらいていく。基礎は残り、上部構造は転用され土手側に展望台として現れる。そのように変容していくランドスケープがこの作品の目指すところとなった。



第45回学生設計優秀作品展 作品集から
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